#9 どうして生地には水通しが必要?
こんにちは、美人服洋裁師の山﨑ゆきこです。
着る人を美人に見せる「美人服」を作る洋裁師として、
運営しています。
こちらのブログ「美人服を作るための洋裁レッスン100」では、
一級技能士が洋裁に役立つ情報や簡単レシピをご紹介しています。
洋裁教室でよく皆さんから質問される「生地の水通し」ついて、お話したいと思います。
「まっすぐカットしたのに、柄がずれた!」
「せっかく作ったのに縮んで着られない!」
そんな経験はありませんか?
洋裁にありがちなこれらのトラブルは、生地を裁断前に水通しをしておけば、解消することができます。
では、どうして買ったばかりのきれいな布をわざわざ水に通さなくてはいけないのでしょうか?
水通しとは
生地の水通しとは、裁断前の下準備として、布を水に浸して乾かし、整えておくことです。
仕上がった後に、ドライクリーニングに出すものは必要ありませんが、家庭で洗濯するものは、生地の段階で水通ししておくことが大切です。
この行程を省くと、仕上がってから縮んだり歪んだりしてしまいます。少し面倒ですが、裁断前に必ず行うようしましょう。
水通しの目的
1. 縮み
天然繊維の多くは、水で縮む性質があります。そのため、それらの素材は、裁断の前にあらかじめ縮ませておく必要があります。せっかく作った洋服も、洗濯のたびに縮んでしまってはがっかりです。生地によっては、10%以上縮んでしまうものもあるので、注意しましょう。
2. 地直し
縦糸と緯糸をまっすぐにして、地の目を整えます。地の目は洋服作りの大切なポイントです。生地は一見整っているように見えても、実際は大きく歪んでいます。縦糸と横糸が直線になるように整えましょう。
特にチェック柄は、縦横が歪んでいると裁断の時に困ります。直線にカットしたのに、柄がずれているということが頻繁に起こるからです。チェックの縦横が直線になるように、入念に地直ししましょう。
3. 色落ち
水に浸すと、色落ちする素材かどうか判別できます。色移りしてはいけないので、複数の生地を一緒に浸けないで、一枚ずつ水に通しましょう。
水通しが必要な素材
家で洗うものは水通し
洋服小物に関わらず、出来上がった後に、家庭で水洗いするものは、水通しが必要です。
水通しが必要
- 綿
- 麻
- キュプラ(ベンベルグなど高級裏地に使われます)
家で洗濯する場合のみ必要
- シルク
- ウール
- 化学繊維
シルクとウールは、水洗いが不向きなので、ドライクリーニングが一般的です。例外として、シルクジャージやウールニットなど、水洗いできる素材があります。出来上がったものを、家で洗濯する場合は、裁断前に水通ししておきましょう。
化学繊維には様々な混紡素材があります。性質も様々ですので、購入する際に、水洗いできるかどうか必ず確認しましょう。
水通しのやり方
生地の耳が吊れてしまうことがあります。厳密な柄合わせの必要なチェック柄などは、耳をあらかじめカットしておいた方がベターです。
step 1 水に浸ける
生地を畳んで、たっぷりの水に2〜3時間浸します。色落ちする場合があるので、一枚ずつ浸けましょう。
step 2 干す
水が滴り落ちない程度に軽く絞ります。雑巾のように絞ってしまうと、地の目が崩れます。手で軽く押さえて脱水しましょう。洗濯機を使うなら、脱水コース30秒程度。
脱水したら生地を広げて縦横を整え、物干で陰干しします。
step 3 アイロン
生地は乾ききっていても構いませんが、半乾きの状態がベストです。
ポイントは、アイロンを動かす方向です。上下、左右だけに動かし、斜めには動かしません。斜めに伸ばすと、せっかく整った縦糸横糸が乱れてしまうからです。糸がきちんと直線になるように、上下左右にアイロンを掛けましょう。
まとめ
生地はきちんとプレスが掛かっていて、一見地の目が整っているように見えます。しかし、実際は大きく歪んでいるので、そのまま裁断を始めると、トラブルの原因になります。
思い立ったらさっさと裁断してしまいたくなりますが、水通しは大切な行程です。作品の完成度を上げるために、下準備はきちんと行いましょう。
買ってきたら、しまう前にまず水通しをしておくのも良いかもしれません。裁断前の水通しを、洋裁の習慣にしてください。